別に地味でもいい。せめて「当たり前を当たり前」にやらせて欲しい。そんな夢を見た。

2022/07/23

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夢を見た。

私は、例えば彼女や家族に説明の難しい「システム運用」という仕事を生業としていた。相変わらず。


システムの世界では大きく「開発」と「運用」という区分けができる。開発はそのままである。システムを作る仕事だ。運用とは作ったシステムのお世話をする仕事である。作ったシステムは作りっぱなしというわけにはいかない。

彼女も、子どもも、作りっぱなしというわけにはいかない。

それと同じだ。

作るよりも長い時間システムを見守っていかないとならない。とても地味で、とても大変な仕事である。しかし、なぜか、人もお金も開発に流れていく。


見慣れない顔だ。新しい中途入社の仲間だろう。

「障害時にディスプレイを拠点間で切り替えたいんだけど」

『トリガーと紙があれば、大丈夫よ』

私は軽く答えた。


トリガーとは作業を開始する基準。紙とは手順書だ。

システム運用の最前線はオペレーションといって、24時間365日、オペレーターが監視をしているのが常だ。重要な仕事の割に、安いコストで協力会社、つまり下請け孫請けが担っていることが多い。孫請けの正社員ならまともな方で、契約社員ということも多い。

そんなオペレーターは自分から動くことは出来ない。

障害検知のメールや、上位者からの指示で初めて動く。

それが「トリガー」だ。明確に規定しないとならない。

勝手な操作はシステムの安定稼働に支障をきたす。前線の兵士が勝手な判断で銃を発砲したら軍隊は成り立たない。

それと同じだ。

「手順書」はその意の通り作業手順だ。

オペレーターは手順に則り作業を行う。基本、2人態勢でダブルチェックを行う。指さし確認を行うオペレーターもいる。そんな地味な光景が私たちの暮らしを支えている。

真夜中、非正規雇用のオペレーターが社会を支えている。


私は頭の中でイメージしていた。

トリガーはメールでいいだろうし、手順も簡単だろう。手順書の作成も、引継ぎも、時間はかからなそうである。作業自体も時間はかかりそうにない。現場のオペレーターも渋ることはないはずだ。

そんな皮算用が一瞬で成立したので「大丈夫よ」と、軽く答えられた。


夢の中のシステム部門は極めてシンプルで正常だった。システム運用の仕事を、当たり前に考えて、当たり前に引き受けられる世界だった。普通の世界だった。

システム運用を全く知らない開発畑からのプロパーの部長にいちいち説明する手間は無いし、重箱の隅ばかりつついて物事を決めないグループ本体から来たという統括部長の不毛な横やりも無い。ただただコミュニケーションや責任範囲で揉めるだけの、意味の分からないマルチベンダー体制でもない。

システム運用という職責に邁進できる世界だった。

なぜかうちのグループは統括という飾りの付いた管理職の名前が好きだった。だいたい統括という飾りのついた管理職は仕事が出来ない上に、統括など出来ないソーシャル・ヒューマンスキルの低い人間ばかりというのが下っ端やお取引先、協力会社の暗黙の常識だった。ところが、年収は1千万を超えるというのだからたちが悪い。

彼らの生活は年収1千万が前提になっていた。

あたりまえだが、生活レベルを落とすことは、人間には出来ないらしい。必然と、彼らは飾りを守ることが仕事になる。

保身しか頭にない中年と関わるのは毒である。下っ端ににもお客様にも。

かつて、女のヒステリーほど醜いものはないと書いた小説家がいたが、男の保身や無知も相当醜い。


私は、引き受ける予定の作業をオペレーターに伝えるべく、システム運用の拠点に移動を急いでいた。システムの世界では運開分離、運用と開発を指揮命令系統も物理的なシステム自体も厳格に分離するのが常識だ。夢の中ではそれが普通に実施されているようであった。

社会の教科書にあった三権分立みたいなもので、情報保全や人間による不正、予期しない誤動作を防ぐために運用と開発は分離するのが常識だ。


夢の中では、開発の人間が保守や運用までやっている、私が新卒で入った20年前以上の時代でもありえない仕事のやり方をしている現実とは違うようだった。

だからシステム運用の仕事をしている私なのだろう。

しかし、現実は違った。

重箱の隅をつつくのに忙しくて何も決めないなら、その業界の常識で進めればいいのだが、保身しか頭にない中年の考えはそうではないらしい。人間なんて、その人にならないと理解は出来ないものだ。

運開分離の実現は、5年先でも早い方だ。


夢の中で、夢の世界と現実が入り交じり、陰鬱な気持ちになった。

逃げたくなった。


目が醒めた。

私は何の仕事しているだろう?システム?どこの会社?

現実を把握するのに時間がかかった。

把握するより先にスマホを覗いた。

4時53分だった。

そうだ、倉庫の仕事だ。復職にあたって、システム部門から異動したのを思い出した。思い出したという表現は、いささかおかしいが、そんな気持ちだった。すでに1年数か月、倉庫で働いていた。

なぜか、ほっとした。

現実のシステム部門ではシステムの仕事は出来ない。

目の前の仕事に専念できる倉庫は悪くなかった。システム運用の現場と同じように、倉庫の仕事も地味で、お金も人も流れてこないが、金融機関にとって大切な仕事だ。決済というインフラを支えている。想像を超える肉体労働も、鈍った身体にとって悪いことではなかった。

着任して7kg痩せた。


世の中では疫病の蔓延で物流や倉庫などのロジスティックが滞り便利な生活に影を落とした。それにより、いつしか皆が、今まで見えなかったロジスティックというインフラを認知し始めた。

時代にそぐわない侵略戦争と、その侵略戦争を始めた大国の軍隊の映像は、兵站(これもロジスティックと訳される)の致命的なほどの脆弱性を曝け出して悶えていた。

それでも現実のカイシャという狭い世界ではロジスティックの要の倉庫は閑職、へき地であった。もちろん、へき地はへき地で、保身ばかりの統括という飾りの付けた中年がいる。カイシャの既得権の分配は、よく出来ている。

自分の手で最終修正した文書に部下の名前の署名しかしないということを平然とやってのける。責任から逃れることが仕事にになると、人間はここまで堕ちるのかと哀れみの気持ちが先に湧いた。

システム部門同様、倉庫も変わることは無さそうだ。

その中年は定年延長で5年は統括の飾りをつけるらしい。


結局、ほっとしたのは一瞬だった。

仕事のことを考えるのをやめた。

昨日は土曜出勤だったため、日曜の1日で家のことや静養をしなければならない。世の中を支える現場に思いを馳せ続けている余裕など無い。

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